滑り台の縁がいつのまにかなくなって、ぐーんと遠く小さくなった末端の岩の塊りの横に、灯台とヘリポートが、そして海の中には私たちが戻るまでのヒマをもて余して遊びに出ていった船が、純白にギラギラと輝いて見えてきた。
と思うと、北風泊を直下に見下ろす山腹の傭鰍が開けた。
吸いこまれるような海の碧さと、1歩足を滑らせたら最後草を滑ってその碧みの中に一気にころがり落ちてしまいそうな、めくるめく草の急斜面。
足がすくむ。
斜面の向こうには、兜岩の文字通りカブトのように尖った熔岩ピークが屹立していた。
そしてそのかなたに北海道 旅行で訪れた江良岳、さらに遠くには渡島半島が淡青色に中空に横たわって-と見ると、何と、半島の下にはいちめんに雲が棚引いていた。
たった海抜700メートルあまりの島だというのに、しかもまだ登り切っていないというのに、雲海が下にあったのだ!
そこから上はひろびうとした草原だった。
ミヤマオダマキの紫の花やクモマミミナグサらしい白い花が、時々草からのぞく。
微風に楚々と揺れる風情が、頬ずりしたいように可愛らしい。
登るにつれて、空にもっこり盛り上がる草原のてっぺんが、ゆっくりゆっくり大きくなってくる。
Yさんの小さな姿がその上に消えかかっている。
Aさんと0さんはもう消えてしまった。
その盛り上がりが、滑り台熔岩流の出だし、清部岳から南西に下ってくる尾根の肩だった。
肩を越えた瞬間、眼を見張って、息をのむ。
寛保岳とそれをとりまく火口原とその外側の外輪山とが、いちどきに視野いっぱいに出現したのだ。